認知症は、高齢になるほど罹患する可能性が高まります。
病状が進行すると、介護が必要になるため、経済的な備えがあると安心です。
認知症になった際に受け取れる給付金の種類や、診断後でも加入できる保険の保障内容を詳しく解説します。
認知症を正しく理解し、公的支援制度について詳しく知りたい方にとって、必見の情報を提供します!
この記事の内容をまとめると
- 認知症でも引受基準緩和型保険、無選択型保険、特定の団体保険、認知症保険には加入できる可能性があります。
- 認知症保険では、診断時一時金や介護給付金がもらえる他、認知症と診断された後、保険料が免除される商品があります。
- 高額の介護費用を抑える方法には、高額療養費制度、高額サービス費制度、高額医療・高額介護合算療養費制度などの公的支援を活用する方法があります。
- 認知症予防プラン付き保険や認知症へ進行した時に追加給付金がもらえる保険など、軽度認知障害(MCI)に対応した保険があります。
- 認知症保険は早めに契約することで、保険料を抑えたり、健康状態による加入制限を回避したり、保険料の支払い期間を短縮するなどのメリットがあります。
認知症とは?基本知識と診断基準
認知症の原因と診断の流れ
認知症は特定の病名ではなく、脳神経細胞がダメージを受ける病気の総称です。
今や超高齢社会の日本では、認知症は誰でも耳にしたことがある身近なものとなりました。
高齢者に占める認知症の有病率は、軽度認知障害(MCI)も含めると、約28%です(2022年厚生労働省の調査)。
高齢者の約3人に1人という計算になり、他人事ではありません。
認知症について、正しい知識を持つことが重要です。
ここでは、認知症の原因と診断の流れについて、詳しく解説します。
認知症の基礎疾患には、以下のような4大疾患があります(図1)。
- アルツハイマー型認知症:全体の約68%を占め、最も多いタイプです。脳内にアミロイドβやタウという異常なタンパク質が蓄積するのが原因です。
- 血管性認知症:全体の約20%を占め、2番目に多いタイプです。脳の血管が詰まって血流が悪くなることで、脳の組織が壊死することが原因です。症状の進行は階段状の悪化(突然悪くなり、しばらく安定する)が特徴です。
- レビー小体型認知症:全体の約4%を占めます。脳内にαシヌクレインという異常なタンパク質が蓄積するのが原因です。幻視(小動物など、はっきりとした幻覚が見える)や変動する認知機能が特徴です。
- 前頭側頭型認知症:全体の約1%を占めます。脳内にTDP-43やタウという異常なタンパク質が蓄積するのが原因です。人格の変化や行動異常(暴言や無関心など)が主症状です。

図1.認知症の基礎疾患の内訳(出典:平成24年度認知症対策総合研究事業)
診断は、問診、神経心理学的検査、身体的・神経学的診察、画像検査、血液・髄液検査などを組み合わせ、総合的に判断されます。
各検査の概要を説明します。
- 問診:いつから、どのような症状が始まったか、記憶障害の程度、日常生活への影響、行動や性格変化などについて、本人や家族から聴取します。
- 神経心理学的検査:主に長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)という机上で行う検査などが実施されます。スクリーニング検査で、30点満点のうち20点以下で認知症の疑いがあると判断されます。
- 身体的・神経学的診察:基礎疾患によって、身体的・神経学的な症状が異なるため、鑑別のために行います。
- 画像検査:脳MRI・CT(脳萎縮や脳血管障害の有無を評価)、SPECT検査・PET(脳血流や代謝異常を評価)などを実施します。
- 血液・髄液検査:甲状腺機能低下症・亢進症、ビタミン欠乏症、梅毒、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)など、可逆的な原因を除外します。
次に、国際的に用いられている診断基準(DSM-5)について解説します。
診断基準は、以下の3項目をすべて満たすことです。
- 認知機能の低下が、記憶・学習、注意、言語、視空間認知、社会的認知、遂行機能のうち2つ以上の領域で認める。
- 日常生活に支障をきたす。
- 他の精神疾患や薬剤による影響ではない。
軽度認知障害と認知症の違い
軽度認知障害はMCI(Mild cognitive impairment)とも言い、健常な状態と認知症の中間の状態です(図2)。
つまり、認知症と比べて、症状の程度が軽いです。
大きな違いは、2つあります。
1つ目の違いは、介護が必要な状態かどうかです。
軽度認知障害(MCI)では、自立した生活が可能です。
2つ目の違いは、可逆性(症状が改善する可能性)があるかです。
認知症は基本的に改善せず、症状は進行します。
一方、軽度認知障害(MCI)は症状が改善する人もいます。
1年で約5~15%が認知症に進行し、治療によって約16~41%が健常な状態に回復することがわかっています。

図2.MCIは健常な状態と認知症の中間の状態(出典:厚生労働省 MCIハンドブック)
若年性認知症とリスクとは?
若年性認知症とは、65歳未満の方が発症する認知症です。
症状は、高齢者の認知症と大きな差はありません。
平均発症年齢は50歳代前半で、男性に多いのが特徴です。
働き盛りの世代のため、本人や家族の生活に大きな影響を与える可能性があります。
若年性認知症の原因となる基礎疾患は、多い順から、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症、外傷による認知症であり、認知症の場合と若干異なります(図3)。
若年性認知症が発症するリスク要因には、以下のようなものがあります。
- 遺伝的要因:アルツハイマー型認知症の一部では、遺伝が関与します。
- 生活習慣と健康状態:高血圧や糖尿病は血管性認知症の発症リスクを高めます。生活習慣では、運動不足・喫煙・過度な飲酒も血管性認知症の発症リスクを高めます。
- 精神的ストレスやうつ:長期的なストレスやうつ病は、脳機能の低下を引き起こし、認知症のリスクを増加させます。
- 睡眠不足:慢性的に睡眠が不足すると、脳の老廃物排出を妨げ、認知症のリスクを高めます。
予防策として、バランスの良い食事と適度な運動や睡眠を心がけ、ストレスを管理し、定期的に健康チェックをすることが大切です。
認知症と脳の器質的変化
認知症には、中核症状と周辺症状(行動・心理症状:BPSD)という2種類があります(図3)。
中核症状は、記憶障害(物忘れ)、見当識障害(時間や場所がわからなくなる)、理解・判断力の低下などです。
周辺症状は、不安、焦燥(焦りやいらだち)、抑うつ、徘徊(屋内外をうろうろと歩き回る)、暴言・暴力などです。
介護をする上で、周辺症状が強く出現すると、介護者の負担が大きくなります。

図3.中核症状と周辺症状の違い(出典:介護新聞byいい介護)
脳の器質的変化とは、脳の組織に損傷や変化が生じることです。
認知症の基礎疾患である4大疾患は、すべて脳の器質的変化を伴います。
画像診断によって明らかになるため、脳MRIやCTの検査が行われます。
認知症でも加入できる保険
認知症保険の保障と給付金
認知症保険とは、認知症と診断された場合などに給付金が支払われる保険です。
主な保障内容について解説します。
- 診断一時金:認知症(または軽度認知症:MCI)と診断された場合に、50~300万円程度の一時金が支払われます。
- 介護給付金:認知症が進行し、一定以上の介護状態になった場合に、50~100万円程度(要介護2以上など)の給付金が支払われます。
- 保険料の免除:認知症と診断された場合に、その後の保険料が免除されます。
一部の商品では、認知症になった後でも加入できるものもあります。
また、認知症の方が起こしたトラブル発生時への対応もしてくれる商品があります。
各保険会社によって、保険料や保障内容が異なるため、事前に複数の保険会社で比較しましょう。
介護保険と保障の違いとは?
介護保険には、国が実施している公的保険制度の公的介護保険と、生命保険会社が取り扱っている民間介護保険の2種類があります。
公的介護保険
保障は、保険金や給付金が支払われるのではなく、介護サービスの利用時に自己負担額を軽減するというものです。
40歳以上の方(第2号被保険者)が介護保険料を負担し、原則65歳以上の方(第1号被保険者)が要介護(あるいは支援)認定を受けた時に、介護サービスを受けることができます。
40~64歳でも、脳血管疾患などの特定疾病の場合は、利用が可能です。
介護サービスには、デイサービスなどの通所系サービス、訪問看護・リハビリなどの訪問系サービスに加え、福祉用具のレンタルや住宅改修の支援も含まれます。
民間介護保険
保障は、保険会社が定める介護が必要な状態になった時に、保険金・給付金が支払われます。
保険金は一括で支払われる商品と年金形式で支払われる商品があります。
商品によっては、一時金と年金形式での両方を受け取れるものもあります。
認知症と診断後の契約可否
認知症と診断された後は、通常の生命保険への加入が難しくなる場合があります。
意思能力がある状態であれば、生命保険の契約自体は可能なため、保険に加入できる可能性はあります。
以下のような保険では、加入できる可能性があります。
- 引受基準緩和型保険:一部の生命保険・医療保険では、告知項目が少なく、認知症の方でも加入できる場合があります。
- 無選択型保険:告知や医師の診査(被保険者の健康状態を把握し、契約の可否を判断)が不要なのが特徴です。保険料は、引受基準緩和型保険よりもさらに割高です。保障内容には制限がある場合が多いため、保険料と保障内容のバランスを慎重に検討しましょう。
- 特定の団体保険:会社などの団体が提供する保険プランの中には、健康状態に関係なく加入できる場合があります。
認知症を発症していても、条件付きで加入できる保険はありますが、保険料や保障内容をしっかり比較して選ぶことが大切です。
終身保険と定期保険の違い
生命保険の終身保険と定期保険は、保障期間、保険金、保険料などの違いがあります。
これらの違いについて、詳しく解説します。
終身保険(貯蓄型)
- 保障期間:途中で解約や失効がない限り、契約者が亡くなるまで継続します。
- 保険金:満期保険金はありませんが、期間の経過と共に解約返戻金が増え、途中で解約した場合に支払われます。ただし、早期解約の場合、受け取れない場合があります。
- 保険料:定期保険よりも、一般的に高いです。
定期保険(掛け捨て型)
- 保障期間:一定の期間が決まっており、年満了(年数で設定)と歳満了(年齢で設定)があります。この期間を過ぎたら、保障は終了になります。
- 保険金:契約期間中に死亡した場合に死亡保険金が支払われます。満期が来た場合や途中で解約した場合は、保険金は原則的に支払われません。
- 保険料:終身保険よりも、一般的に安いです。
長期的な備えなら終身保険、一定期間の備えでコストを抑えたいなら定期保険を選ぶとよいでしょう。
認知症保険のメリット比較
認知症保険にはさまざまなメリットがありますので、以下に詳しく解説します。
- 診断一時金が受け取れる:認知症と診断された時に、まとまったお金が受け取れます。
- 介護費用に充てられる:公的介護保険のみではカバーしきれない部分を補填できます。
- 使途自由な給付金:介護費用だけではなく、生活費などにも使用できます。
- 保険料免除特約:一定の条件を満たせば、認知症と診断後の保険料の支払いが不要になります。
- 相続対策:終身保険であれば、資産として活用できます。
保障期間の選び方と保険料の比較
保障期間の選び方と保険料比較のポイントには、以下のようなものがあります。
- 経済的に無理のない保険料で、払込期間を継続できるか、十分な給付金額かを検討しましょう。
- 60歳以上での加入の場合は、一生涯保障される終身保険が安心です。
- 40~50歳代なら、定期保険(10~20年)で月々の保険料負担を軽くし、診断一時金を重視する考え方もあります。
認知症で使える公的保障
公的介護保険の自己負担と請求
自己負担額は原則1割ですが、所得に応じて2~3割の場合もあります。
世帯全員が住民税非課税の場合は1割です。
2割あるいは3割かの決定は、本人の合計所得、同一世帯内における65歳以上の年金収入、その他の合計所得金額に応じます。
合計所得金額には、公的年金等控除後の年金所得やその他の所得が含まれます。
さらに、要介護度の区分に応じて、介護サービスの利用限度額が異なります(図4)。
支給限度額を超えた場合は、全額自己負担になります。

表1.居宅サービスの1か月あたりの利用限度額(出典:厚生労働省「介護保険の解説」)
介護サービス費の請求
介護サービスを利用した後に、利用者は介護サービス費の自己負担分(1~3割)をサービス提供事業者に支払います。
サービス提供事業者は、市町村に請求し、残りの7~9割分が支払われます。
認知症向け支援制度の活用
認知症と診断された場合に活用できる、以下のような公的支援制度があります。
自立支援医療(精神通院医療)
認知症で精神科の医療機関に通院した場合、自己負担額が軽減されます。
適用を受けると、医療費などの自己負担は基本的に1割です。さらに、収入による自己負担額の上限が設けられています。ただし、指定登録された医療機関である必要があります。
精神障害者保健福祉手帳
認知症は精神障害に位置付けられており、この手帳の対象になります。
この手帳を持っていると、所得税、住民税、相続税、贈与税などが控除・減免されます。その他にも、公共交通機関・NHK受診料・携帯電話料金・文化施設・映画館などの割引や減免など、さまざまな支援が受けられます。
障害の程度や各自治体によって内容が異なる場合があるので、確認してみましょう。
手帳が交付されなかった方でも、各自治体で障害者控除対象者認定を受けると、税制面での優遇措置が受けられる場合があります。お住まいの自治体に、確認してみましょう。
特別障害者手当
精神または身体に著しい重度の障害があるために、日常生活において常時特別の介護が必要な20歳以上の在宅障害者に支給されます。
認知症の方は対象ですが、精神障害者保健福祉手帳の等級が1級に該当する場合で、その他の基準を満たした場合にのみ支給されます。
3カ月以上継続して入院している場合、あるいは施設入所している場合は、基本的に支給されません。
月額28,840円(令和6年4月より適用)が、年4回(2月・5月・8月・11月)が支給されます。
高額介護費用を抑える方法
高額療養費制度
1か月(月初め~月末まで)に負担する医療費の合計金額が、自己負担限度額を超える場合に利用でき、自己負担限度額を超えた分の金額が戻ってきます。
高額介護サービス費制度
介護サービス費の自己負担額が一定額を超えた場合に、払い戻しを受けられます。
1か月の負担の上限額は、収入に応じて異なります(表2)。
申請先は、市区町村の介護保険窓口です。

表2.高額介護サービス費の設定額と負担の上限額(出典:厚生労働省「介護保険の解説」)
高額医療・高額介護合算療養費制度
1年間の公的医療保険と介護保険のサービス費の合計が高額になった場合、負担額を軽減する制度です。
公的医療保険には高額療養費制度、介護保険には高額介護サービス費制度があり、1か月単位で自己負担額が軽減される制度があります。
しかし、これらの制度を利用してもなお、世帯単位で1年間の医療費と介護費の合計が、一定額を超えた場合に、超えた分の金額が還付される制度です。
対象は、医療保険と介護保険サービスの両方を利用している方、同じ公的医療保険制度に加入している世帯である方です。
負担の上限額は、年齢(70歳未満は5段階、70歳以上が6段階)と世帯の所得に応じて異なります。
各自治体の助成制度
場所によっては、介護費用の助成制度がある場合があるので、確認してみましょう。
介護サービスの申請方法
公的介護保険サービスを利用するには、要介護認定が必要になります。
要介護認定を申請する流れは、以下の通りです。
- 市区町村の窓口に、本人や家族などが申請します。
- その後、認定調査員が本人の状態を確認しに来ます。
- 医師の意見書と合わせ、審査判定が行われます。
- 認定結果は、約1か月程度で通知されます。
- 要介護認定が済むと、介護支援専門員(ケアマネジャー)の担当が決まります。
- 介護支援専門は本人や家族と相談の上、希望するサービスを反映したケアプランを立てます。
- その後、介護サービスの利用が可能となります。
- ケアプランは利用者の状態や希望に合わせ、定期的に見直されます。
認知症で必要な費用とは?
介護費用の平均と負担額
介護費用の全体平均は8.3万円です(図4)。

図4.介護に要した費用(出典:生命保険文化センター「介護費用に関する全国実態調査/2021年度」)
要介護度が上がるにつれて、介護費用は増加する傾向にあり、最も高額なのは要介護5の10.6万円となっています(図5)。

図5.介護に要した費用(出典:生命保険文化センター「介護費用に関する全国実態調査/2021年度」)
一次的な費用の合計(図6)
住宅改修や介護用ベッドの購入など、一時的な費用の合計は、平均74万円となっています。

図6.介護に要した費用(出典:生命保険文化センター「介護費用に関する全国実態調査/2021年度」)
認知症の治療費はいくら?
認知症の治療費は、診察代・薬代・検査費などの費用がかかります。
以下に、各治療費の月額費用の目安(3割負担の場合)を示します。
初診(精神科・脳神経内科):約5000~10,000円
定期診察(1回):約1,500~3,000円
薬代(認知症治療薬):約3,000~10,000円
脳MRI・CT検査:約10,000~20,000円
施設と在宅介護の費用比較
在宅では平均4.8万円、施設では平均12.2万円となっています(図7)。
特別養護老人ホームは介護付き有料老人ホームと比べて費用が安めですが、待機者が多く、すぐに入居できないというデメリットもあります。
一方、介護付き有料老人ホームの費用は高めですが、充実した介護サービスが受けられるというメリットがあります。
その他、少人数制で、認知症ケアに特化している認知症対応型グループホームという選択肢もあります。費用は、特別養護老人ホームよりも若干高いことが多いです。
全般的に、個別の介護度、施設の立地条件、提供サービスの内容などによって費用は異なります。

図7.介護に要した費用(出典:生命保険文化センター「介護費用に関する全国実態調査/2021年度」)
費用負担を減らす保険活用
認知症の治療および介護費用の負担を減らすため、以下に保険活用の方法を紹介します。
公的介護保険
- 介護サービス費用を、所得に応じて、自己負担額を1~3割に軽減してくれます。
- 高額介護サービス費制度を利用すれば、上限額を超えた分は払い戻されます。
- 住宅改修する場合、認定区分にかかわらず、最大で20万円まで補助金の利用が可能です。
- 歩行器や住宅改修を伴わない手すりなどの福祉用具の貸与を受けることもできます。1度購入しても、身体状態に応じて、購入し直す場合もあるため、貸与も費用負担の軽減に有益です。
- 排泄や入浴で使用する福祉用具、杖や歩行器などを購入する場合に、1~3割の自己負担で購入することができます(負担額は、所得に応じて異なります)。1年度間の上限額は、1割の方で9万円、2割の方で8万円、3割の方で7万円までとなります。
民間の認知症保険
- 診断給付金:認知症と診断された時に、一時金50~300万円の給付金を受け取れます(金額は各保険会社の商品によって異なります)。
- 介護年金:月額5~10万円が、継続的に給付されます(金額や期間は、各保険会社の商品によって異なります)。
- 死亡保障:万が一、亡くなった際に、家族へ支払われます。
認知症保険の選び方とは?
加入条件と契約時の注意点
保険会社によって細かい違いはありますが、一般的な加入条件と注意点は以下の通りです。
- 年齢:加入が可能な範囲は、多くは40~80歳です。商品によって異なります。
- 健康状態:申し込み時に、基本的に認知症の診断を受けていないことが必要です。認知症になった後でも加入できる商品もあります。
- 次に、契約時の注意点についても解説します。
- 不担保期間の有無:一定の免責期間がある場合、その期間内に認知症と診断されると、支払い対象外となります。
- 告知義務の確認:健康状態の告知に虚偽があると、保険金が支払われないことがあるため、告知項目を十分に確認しましょう。
- 保障内容の細かい条件:認知症の進行度によって給付条件が異なる場合や、要介護認定が必要な場合もあります。保険会社によって異なるので、複数で比較しましょう。
- 保険料の払い込み期間:ライフイベントも考慮し、長期的に支払いが可能かを検討しましょう。
- 解約返戻金の有無:掛け捨て型で解約返戻金がなく、貯蓄型では解約返戻金がある場合が多いので、事前に確認しましょう。
給付金と支給条件の確認
認知症保険を選ぶ時には、給付金の種類や支給条件を正しく理解することが重要です。
下記に給付金の種類と支給条件について、詳しく解説します。
- 診断給付金:支給条件は医師によって認知症と診断されることです。一度のみ支払われます。まとまった金額が支払われるため、初期の介護費用や生活環境の整備などに活用できるのがメリットです。
- 介護年金:支給条件は、認知症が進行した場合で、一定以上の要介護状態(公的介護保険で要介護2以上など)になった場合に、定期的に支払われます(例:毎月5万円を10年間など)。要介護度は保険の種類や各保険会社によって異なります。長期的に介護費用をカバーできるのがメリットです。
- 介護施設入居一時給付金:支給条件は、認知症のために介護施設に入居したことです。施設入居時の初期費用をサポートしてもらえるのがメリットです(例:施設入居時に50万円支給など)。
- 在宅介護給付金:支給条件は、自宅での介護が必要になった場合で、特定の条件を満たした場合です。在宅介護を支えるための介護リフォームなど、初期投資を補助してもらえるのがメリットです(例:在宅介護を開始したら30万円を支給など)。
- 免除特約:支給条件は、認知症と診断されることです。認知症と診断された場合、それ以降の保険料の支払いが不要になります。経済的負担を軽減しつつ、保障が継続するのがメリットです。
認知症保険は商品によって給付金の種類や条件が異なるため、契約前に詳細を確認するようにしましょう。
保障内容と保険料の比較
保障内容は、一時金としてまとまった金額が支払われるのか、年金形式で定期的に支払われるのかを確認しましょう。また、保障期間が一生涯続く終身型か、一定期間のみの定期型かも確認しましょう。
給付金額が生活費や介護費用を十分にカバーできるか、検討しましょう。
保険料は、保障内容や加入時の年齢、保険会社によって異なります。
保障内容が充実していても、月々の高額な保険料で家計が厳しくなっては、元も子もありません。
保険料と保障内容のバランスを考え、自分と家族の将来的な生活に備えましょう。
終身型と定期型の選び方
保障期間によって終身型か定期型があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
どちらのタイプにするべきか、選び方について解説します。
- 終身型:保障期間は一生涯で、保険料は定期型よりも高いのが特徴です。その分、将来的な健康状態の変化があっても保障されるので安心です。さらに、解約返戻金があり、貯蓄性が高いです。
- 定期型:保障期間は一定期間(10・20年など)で、保険料は終身型よりも安いのが特徴です。デメリットは、更新あるいは変更時に健康状態が悪化している場合、契約が困難になるリスクがあります。
予防や軽度認知障害に対応
認知症予防や軽度認知障害にも対応する商品を、以下に紹介します。
《認知症予防プログラム付き保険》
- スマホアプリで、脳の健康チェック(認知機能をチェック)、食事改善・運動プログラム・脳トレを支援する商品があります。
《軽度認知障害(MCI)に対応した保険》
- MCIの診断時に30~100万円程の給付金を受け取れる商品があります(金額は各保険会社の商品によって異なります)。さらに、認知症へ進行した場合に、追加の給付金が支払われる商品もあります。
- MCIの診断後にも加入でき、回復支援を目的としたプログラムが付いている商品があります。
認知症保険の注意点とは?
不担保期間と契約前の確認
不担保期間は、保険の契約直後から保障が適用されない期間のことです。
保険会社によって期間の設定が異なるため、確認が必要です。
通常では、契約から90日~2年ほどに設定されています。
契約前に、以下の点について確認しましょう。
- 不担保期間の有無と期間:短いほど、支払われないリスクが低くなります。
- 加入時の健康状態の告知義務:既往歴があると、加入できない場合があります。
- 給付金の支払い条件:認知症の診断基準を明確に確認しましょう。
告知義務違反のリスクとは?
告知書の内容に事実と異なる内容があった場合、告知義務違反となり、保険金や給付金が支払われない場合や契約を解除となる可能性もあります。
それまでに支払った保険料は返金されません。
告知書は、加入の是非や保険料を保険会社が判断する材料です。
不明な点は保険会社の担当者に確認し、十分に注意して記載しましょう。
解約返戻金の有無を確認
解約返戻金とは、契約を途中で解約した時に戻ってくるお金のことです。
解約返戻金は、すべての保険に適用されるわけではありません。通常は、終身型保険にある場合が多く、定期型保険にはありません。
返戻率は年数が経過するほど高くなりますが、加入して早期に解約すると元本割れすることもあります(戻ってくるお金が減る)。商品によって返戻率は異なる場合があるので、複数の商品で比較しましょう。
保障対象外のケースを解説
認知症保険で保障対象外になるケースについて、以下に具体例を用いて解説します。
- 保険契約前に、認知症の診断を受けていた。
- 不担保期間中に、認知症と診断されていた。
- 給付金の支払い条件を満たしていない(軽度認知障害の場合、認知症の進行度合いが軽い場合など)。
- 自傷および犯罪行為などで、故意に認知症を悪化させた。
- 虚偽の健康状態を申告して契約していた。
これらのケースでは、保障の対象外になってしまいます。
認知症保険は早めに検討
家族の負担を軽減する方法
家族の負担には、経済的な負担と心理的な負担があります。
経済的な負担の軽減については、公的制度を十分に活用し、病状の進行に合わせた備えで足りない資金を民間の生命保険で補うことも検討しましょう。
若いうちに経済的な余裕がある場合は、老後の備えとして、早めに準備しておくのも有益です。
心理的な負担は、長期的に介護する上で大きな弊害になります。
常に継続した見守りが必要で、身体介護などの支援も必要な状態が毎日続けば、介護者の身体的・心理的な負担は増加します。
認知症に関する専門的知識を持つ人に相談すること(医師・介護サービス担当者・介護支援専門員など)や、介護サービスを利用することなどで負担の軽減につながります。
介護者のストレスが増すと、患者の認知症状にも影響を及ぼす可能性があります。
お互いに笑顔で生活できるように、無理のない生活設定を検討しましょう。
認知症に備えた資金計画
認知症の進行に伴い、介護が必要になるため、段階的に必要な介護費用は増加します。
症状進行の初期・中期・後期の各段階で必要な介護費用を予測し、どの程度の資金を確保すべきかを計画しましょう。
各段階で必要な介護費用について、以下に説明します。
- 初期段階:定期的な通院、薬代
- 中期段階(要介護認定あり):住宅改修、介護サービス(訪問介護、デイサービスなど) ※家族の介護負担が増加することによって、収入が減少する場合もあります。
- 後期段階:介護サービス(内容は中期段階よりも増加することが多い)、施設に入所する場合は入居費用など
早期契約のメリットとは?
認知症保険に早期契約する重要なメリットには、以下の4つがあります。
- 保険料が安くなる:契約時の年齢が若いほど、健康リスクが低いため、保険料が安くなります。
- 健康状態による加入制限を回避:年齢が上がると、認知症の発症リスクが増加します(図8)。認知症以外の病気になる健康リスクも含め、健康なうちに契約することで、加入のハードルを低くできます。
- 不担保期間を早めにクリア:多くの認知症保険は、加入後の一定期間(一般的に、90日~2年ほど)の不担保期間(保障対象外の期間)を設けています。早めに契約することで、この期間を乗り越えることができます。
- 保険料の支払い期間の短縮:終身型の保険では、一定期間で保険料の支払いが終わる短期払いのプランがあります。早く契約すると、働いているうちに保険料の支払いが完了できるため、老後の負担を軽減できます。
このように、若いうちに契約することで、将来的な経済負担を軽減することができます。

図8.年齢階級別の有病率(出典:厚生労働省「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」)
<参考>
- 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「認知症情報ポータル」
- 日本神経学会「認知症診療ガイドライン」
- 日本老年精神医学会「DSM-5に基づく認知症診断基準」
- 厚生労働省 「軽度認知障害」
- 厚生労働省「若年性認知症ハンドブック」
- 厚生労働省「介護保険について」
- 厚生労働省「介護保険の解説」
- 厚生労働省「特別障害者手当について」
- 生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」
- 厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」
- 生命保険文化センター「介護費用の実態調査」
- 厚生労働省「高額療養費制度」
- 厚生労働省「介護施設の費用ガイド」
- 公益財団法人 生命保険文化センター「生命保険を知る・学ぶ」
- 公益財団法人 生命保険文化センター「ひと目でわかる生活設計情報」
- 金融庁「保険選びのポイント」
- 金融庁「保険契約の基本」
- 生命保険文化センター「介護・認知症保険の選び方」
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