将来の介護に対する不安を軽減するために、認知症に特化した保険があります。
認知症になるか分からない中で、認知症保険に加入すべきか、その必要性について説明していきます。
この記事の内容をまとめると
- 認知症保険とは?
- 認知症保険の必要性
- 認知症保険が必要な理由
- 認知症以外の備え
認知症保険とは?その役割と具体的な特徴
認知症保険と介護保険の違い
認知症保険と公的介護保険では、給付条件や保障内容が異なります。
2つの保険の違いについて、一つひとつ説明します。
- 保険者
公的介護保険は、国によって定められている社会保障制度の1つで、保険者は各市区町村です。介護が必要な高齢者を社会全体で支える仕組みを介護保険制度に則り、実施しています。
一方、認知症保険は生命保険会社が販売する民間の介護保険の一つです。そのため、保険者は各保険会社です。 - 加入条件
公的介護保険は、40歳以上になると必ず加入しなければなりません。そのため、保険料の支払いも40歳を迎えると始まります。
認知症保険は、任意保険のため加入する・しないは自由です。保険商品によって、加入できる年齢が設定されており、最も契約可能年齢の幅が広い保険では、20歳から85歳まで可能なものもあります。 - 給付条件
公的介護保険では、65歳以上で要介護・要支援認定を受けている人(第1号被保険者)、または40歳から64歳で、16の特定疾病により要介護・要支援状態になった人(第2号被保険者)が保険給付の対象です。
認知症保険では、被保険者が認知症と医師から診断されることを給付条件としている場合が多く、それに加えて市区町村が実施する要介護認定で要介護状態となった、各保険会社の基準を満たした状態などさまざまです。 - 給付方法
公的介護保険は、基本的に現物支給です。デイサービスや訪問介護などのサービスを利用した際に、利用料が発生します。その利用料が、自己負担1~3割で残りは介護保険からの給付という形です。
認知症保険は、原則現金給付となっており、受け取り方法や金額を自分に合ったものに選択することができます。公的介護保険と認知症保険の大きな違いが、この給付方法です。
認知症保険の必要性
公的介護保険との違いを説明したところで、公的な保険があるなら認知症保険ってそもそも必要なのかなと感じるかもしれません。
任意保険の加入は、個人の経済状況や家族構成など取り巻く環境によって異なります。それでも認知症保険は拡大しており、その理由も含めて必要性について説明していきます。
認知症の発症には老化が大きく影響します。
厚生労働省の推計では、65歳~69歳で1.5%、70歳~74歳で3.6%、75歳~79歳で10.4%、80歳以上では44.3%の人が認知症を発症しています。
つまり、80歳以上の約2人に1人が認知症を発症しています。高齢になればなるほど、認知症になるリスクが高い為、決して他人事ではありません。
心配になるのは、介護にかかる費用です。
生命保険文化センターの調査によると、住宅改修や介護用ベッドの購入費など一時的な費用は平均74万円、毎月かかる介護費用の平均は8.3万円となっています。
在宅介護ではなく、施設入居の場合はさらにお金がかかります。そして、認知症介護は、平均5~10年と長期化しやすいです。
教育費とは異なり、介護費用は終わりが見えないため、計画が立てにくく、不安を感じやすいです。
このような金銭的な不安を少しでも軽減させるために、公的介護保険だけでは対応できない費用や家族の身体的・経済的負担を抑える方法の1つとして認知症保険を活用できます。
認知症保険には、認知症予防サービスや軽度認知障害などにも対応する保険があります。
認知症になる前段階にも、対応できるので本人や家族の支えとして認知症保険を活用することもできます。
認知症保険の保障内容と種類の全体像
認知症診断を受けた場合の保障内容
医師から認知症の診断を受けた際に、給付として認知症保険から一時金を受け取ることができるタイプの保険があります。
認知症の治療にかかる費用や介護費用など必要に応じて保険金を利用することができます。
保険料を抑えたい人、ある程度の介護費用の目途が立っている人、介護が必要になったら早めに福祉用具を整えたい人に適しています。
給付条件としては、医師による認知症の診断に加えて、公的介護保険の要介護認定や保険会社の独自の基準を満たした時に支払われるものがあります。
認知症による介護費用を補償する仕組み
日々の認知症介護に対する保障として、保険の受け取り方法を年金形式で給付するものもあります。
自分が設定したプランによって、毎年30万円などの給付金を受け取ることが可能です。一部の保険商品では、要介護1以上で保険料支払いが免除されるものや、介護度に応じて給付金額が変動するプランがあります。
軽度認知障害(MCI)への対応
軽度認知障害をご存じですか?
認知症は知っていても、軽度認知障害については知らない方も多いかもしれません。
軽度認知障害とは、認知症の前段階と言われ、物忘れと認知症の中間と捉えられています。
物忘れと認知症による忘れの違いは、なんでしょうか。
物忘れとは、「夕飯何食べたかな?」など夕飯を食べたことは覚えているけれど、食べたもの、つまりその内容を忘れている状態です。一方で、認知症の場合は、夕飯を食べたことそのものを忘れてしまっている状態を言います。
物忘れは自覚症状がありますが、認知症はもの忘れへの自覚症状がありません。
忘れてしまう事によって、日常生活に支障をきたすようになると認知症と診断されます。
軽度認知障害は、認知症と診断されるほどの日常生活への影響はまだないけれど、物忘れが目立ってきた状態です。
認知症の多くは、根治する方法が見つかっていません。しかし、軽度認知障害は、早期に発見し、対処すれば認知症への進行を抑えられたり、遅らせたりすることが可能です。
軽度認知障害と診断された方が健常な状態に戻る割合は年間で16~41%で、5~15%の方は認知症を発症するという研究結果もあります。
認知症保険では、軽度認知障害にも対応する商品があります。
軽度認知障害と診断された時に、給付金を受け取ることができるので、治療費に充てるなどして早期に対応することができます。
認知症に伴うアクシデントへの補償内容
認知症の症状により、第三者に怪我をさせたり、他人の所有物を壊したりする可能性があります。それまでとは性格が変わってしまったり、理性的でない行動をとってしまったりすることがあるからです。
このような場合に対応するには、示談交渉や損害賠償等に備える認知症保険が有効です。
例えば、認知症の方が線路内に立ち入り電車を遅延させてしまったなどの時に保険金を受け取ることができます。
2007年に発生したJR東海の認知症事故訴訟という事例があります。
認知症で徘徊していた男性が線路に立ち入り、電車を遅延させたとしてJR東海が遺族に対して720万円の損害賠償を請求しました。
最高裁では、家族に賠償責任があるかどうかは「生活状況などを総合的に考慮して決めるべき」とされて、JR東海の請求は棄却されました。
この訴訟により、認知症家族が事故を起こした際の家族への賠償責任が問われる可能性がある、と世の中に広く知られるようになりました。
上記のような例の場合に備えるには、認知症保険の損害賠償タイプが有効です。その他、行方不明時の捜索費用補償が含まれる保険もあります。
注意が必要なのは、損害賠償に備える保険のため、認知症と診断された時の一時給付金は支払われません。
認知症保険の加入対象者
任意保険である認知症保険は、加入できる対象者が幅広いです。
加入可能年齢は、保険会社や保険商品によって異なりますが、一般的には40歳~70歳くらいまでの間で加入することが多いです。中には20歳~85歳まで加入できる認知症保険もあります。
若い方が自分の将来のために、保険料が安い年齢で加入しておく、中高年世代の方が、子どもに迷惑を掛けないためになど動機はそれぞれです。
加入可能年齢に該当する他、契約のためには健康告知が必要です。
健康告知の多くは、①入院中でないこと、②保険会社が指定する病気の診察、治療歴がないこと、③要介護認定を受けていないことが挙げられます。
健康告知も、保険会社によって異なるため加入を検討する際には、確認しておきましょう。
認知症保険の選び方とポイント
加入条件や契約年齢の確認ポイント
上記のように、加入条件や契約できる年齢は保険会社によって異なります。また、保険期間が、終身型と定期型の2パターンあります。
終身型は一生涯保障が続きますが、定期型は60歳までなど保険期間が設定されています。
定期型を希望する場合は、契約年齢に気を付けましょう。
年齢によっては、選べる商品が限られてしまうため、認知症保険を検討している方は、早めに確認しておきましょう。
保障内容と保険料のバランスを重視した選び方
ほとんどの認知症保険は、掛け捨てタイプです。
仮に、高額の保険料を払ったとしても、保険期間中に認知症と診断されなかった場合、支払った保険料は戻って来ません。
認知症と診断された時に受け取る保険金や年金形式で受け取れる給付金などはどの認知症保険でも同じような保障内容です。
ここで注目するのは、認知症の予防に役立つ付帯サービスがあるかどうかです。
前述した通り、認知症の発症は早期発見・早期対応が重要とお話しました。
保険会社によっては、認知症予防アプリを契約者に提供してウォーキングの歩数やスピードを測定する、認知機能を測る簡単なゲームなどができます。
本人が自主的にやらないといけないというデメリットはありますが、保険料を払っているという意識が、認知症予防のための行動につながるきっかけになるかもしれません。
保障内容の保険金・給付金との費用対効果はもちろんですが、各保険会社の付帯サービスにも注目してみてください。
認知症にならないに越したことはありませんが、保険給付を受けても受けなくても、納得のいく保険料がいくらかは保険選びの際に重要なポイントです。
保険金の受け取り方
認知症保険の保険金・給付金の受け取り方は2パターンです。
1つ目は、給付条件に該当した際に、認知症一時金としてまとまった金額を受け取る方法です。
金額は商品によって異なりますが、100万円~500万円程度のものが多いです。
介護に必要な物の購入費用に充てることができます。
2つ目は、毎年一定の金額が給付金として支払われる年金形式の受け取り方です。
認知症介護が長期間にわたる時には、毎月の費用を抑えることができます。
こちらも商品によって異なりますが、5万円~20万円程度の商品が多いです。
受け取り方法は2パターンですが、どちらか一方のみしか選択できないわけではありません。
両方を受け取ることも可能ですが、その分保険料が高額になってしまうので、自分に合った金額・方法を選択しましょう。
認知症以外の病気や要介護状態もカバーする保険の選び方
認知症がきっかけで要介護状態になった後に、病気や怪我をすることも十分あり得ます。
介護が必要になる原因第1位は認知症ですが、厚生労働省によると2024年の日本における死因第1位はがん、第2位は心疾患です。
これらの病気になった際、保険給付を受けられる特約がある商品を選択すれば、治療費の負担を軽減することができます。
付帯サービスや契約オプションを上手に活用
付帯サービスとは、認知症保険の被保険者に用意されているもので、保険金の支払いとは別で利用することができます。
商品により異なりますが、例えば、定期的な認知機能検査、認知症に関する電話相談、予防のための脳トレなど保険金の支払いを受ける前でも利用できるため、加入後すぐに活用することができます。
特約として注目するのは、軽度認知障害保障です。
軽度認知障害と診断された際に一時金を受け取れる保障で、早期発見・治療をするための治療費の負担軽減につながります。
認知症保険の加入手続きと流れ
加入手続きから給付金請求までの手順
保険商品の申し込みは、対面かインターネットで行う事が出来ます。また、店舗やオンライン上で相談してから加入申し込みをする場合など保険会社によって異なります。
希望する商品を選び、保険料の確認や個人情報の入力をします。その後、本人確認書類の提出をして手続き完了です。
手続きの際に、健康診断結果やお薬手帳があると健康告知の際にスムーズです。
加入手続きは、家族や親族と一緒に行うことがおすすめです。
認知症を発症した時に、自分が認知症保険に加入していることを忘れてしまっているかもしれません。家族と一緒に手続きをしたり、加入したことを伝えたりして、保険金を受け取らなかったとならないようにしましょう。
給付条件に該当した時は、給付金請求の申し出を行います。
被保険者自身に、請求する意思能力があるかないかによって進め方が変わってくるので、各保険会社に確認しましょう。
事前に準備する書類と情報
申込時に事前準備するものは、健康告知の際に必要な健康診断結果とお薬手帳、支払い時に使用するクレジットカードや銀行口座番号です。
請求時には、診断書、要介護認定が給付条件の場合、介護保険被保険者証が必要です。
認知症保険の実態と事例
認知症保険加入率と利用例
生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」によると、日本における認知症保険の世帯加入率は、2021年6.6%、2024年では7.6%に増加しています。また、世帯主の年齢別でみると60歳~69歳の認知症保険加入率は10%を超えています。認知症保険に加入する割合が、増加していることが分かります。
外出先で暴れて他人に怪我を負わせてしまった、他人の所有物やお店の物を壊してしまったなどのケースでは、本人に責任能力がない場合には、本人に代わって家族が損害賠償責任を負う可能性があります。
そのような時に、認知症保険の損害賠償タイプに加入していると、必要な賠償金を一定の金額まで補償してくれます。
認知症保険が必要な理由とリスク対策
認知症による費用負担と対策
「在宅介護のお金とくらしについての調査」では、認知症がない方の介護と重度の認知症がある方の介護では、年間費用に約60万円の差があることが分かっています。
認知症がある方の介護費用の方が、認知症のない方より負担が大きいです。
認知症にならない事が最良ですが、もしもなってしまった時の備えは必要です。
備えとして、認知症保険に加入するのも対策の1つです。他にも、財産管理をして家族にも情報を共有しておく、公的介護保険を活用する、自治体の補助金制度を活用することもできます。
認知症保険が必要とされる社会的背景
老化が原因となる認知症は、高齢化・長寿化が進む日本で患者数が増加しています。
「令和6年版高齢社会白書」によると、2022年の時点で65歳以上の認知症患者は443.2万人となり、高齢者の約8人に1人が認知症です。軽度認知障害の患者数も含めると3~4人に1人の割合になります。
また、物価上昇などにより日々の生活で手一杯の40代、50代世代が親の介護を理由に仕事を辞めざるを得なくなり、収入が減るにも関わらず、子ども(孫)の教育費、自分たちの老後の貯金をしなければならないなど金銭的に追い込まれてしまうケースもあります。
そこで、老後の経済的安心、子どもへの負担軽減のため、認知症保険を必要とする人が増えています。
認知症介護の現状と将来予測に基づく準備
介護者に「介護に対してどれくらい負担に思っているか」と質問したところ、他の疾患の介護も含む全体では、「負担ではない」と回答した方が9.4%だったのに対し、認知症を発症した介護者が「負担ではない」と回答した方は、4.5%でした。
つまり、認知症患者の介護は、負担を抱えやすいという事が分かります。
その負担となっている大変なことには、コミュニケーションの困難さ、徘徊などの問題行動、排泄介助による身体的な負担が挙げられています。
2040年には、高齢者の6~7人に1人が認知症と推計されています。
家族の介護負担や経済的負担、医療費の増加、事故やトラブルの増加など様々な社会問題が予測されます。
貯蓄・資産形成、健康増進や認知症予防など個人でできることや、認知症の早期発見の仕組みづくり、地域コミュニティの充実など行政ができることとそれぞれが取り組んでいくことが必要とされています。
認知症保険に加入する際の注意点
契約後の不担保期間のリスク
認知症保険には、契約してから一定期間、給付の対象外となる不担保期間が設けられていることが一般的です。
契約から半年や2年以内など期間は保険会社によって異なります。
不担保期間中に、認知症と診断されても保険金は給付されません。
認知症保険の加入を検討している、両親や兄弟に認知症を発症した人がいるなどの場合には、計画的に行動しましょう。
給付条件や契約内容を事前にしっかり確認する
認知症保険に加入する際には、給付条件が保険会社によって異なるので事前に確認しましょう。
給付条件には、認知症と医師から診断されただけでなく、公的介護保険の要介護認定を受けている、保険会社独自の基準の要介護状態であるなど様々なものがあります。
給付条件が厳しく、保険金をなかなか受け取れない事態にならないように注意しましょう。
また、保険料も確認が必要です。若い時に加入するほど保険料負担は軽くなりますが、その時の家計状況やその後のライフプランを踏まえ、支払える範囲内で考えることが大切です。
家族に保険内容を共有しておく重要性
認知症を発症してしまった場合、自分が認知症保険に加入していたこと、その保障内容を忘れてしまう可能性があります。
給付条件を満たしていても、保険金申請をしないままになる、スムーズな対応ができなくなってしまうため、保険に加入した際には、家族などの身内に伝えておく必要があります。
認知症保険のメリット・デメリット
認知症保険に加入することで得られるメリットは、使い道が自由な現金給付であることです。
在宅介護の1ヶ月の介護費用の平均は、46,000円とされています。年間にすると552,000円です。
生きていくためには、賃貸であれば家賃、食費や日用品購入費も介護費用とは別で必要です。
仮に、認知症保険の介護年金タイプに加入しており、年間30万円の給付金が支払われるとしたら、介護費用は252,000円になります。
経済的負担が減るので、お金に対する不安が軽減されます。経済的な不安は、精神を不安定にさせやすいので、給付金を得ることで、不安解消につながります。
経済的負担を軽減し、家族の安心確保
独居生活をしていた親が、認知症の進行により1人で暮らすことが難しくなった場合、家族が同居したり、頻繁に自宅に通ったりと介護負担がかかります。身体的な負担に加えて、お金の問題に直面するケースもあり得ます。
経済的負担を少しでも減らすために、今からできる対策を説明していきます。
介護費用を抑えるためには、公的介護保険や自治体の補助金などを最大限活用します。
自治体には、家族介護支援事業などで年3万円の助成金があるなど特別な介護補助や無料サービスがある地域もあります。
また、年金収入や預貯金額などがいくらあって、どのくらい介護費用に充てられるのかなどを家族間で話し合って、情報共有することで要介護者・介護者双方が安心できる要素になります。
指定代理請求制度を利用できる利便性
指定代理請求制度とは、被保険者が自分で保険金や給付金を請求できない場合、代理人が請求できる制度です。
代理人は、保険加入時にあらかじめ指定するものですが、被保険者の同意があれば、代理人を変更することもできます。
もし指定代理請求人を設定していないと、被保険者が請求できないときに保険金や給付金を受け取ることができなくなってしまいます。
認知症の予防や早期治療のためのサービス
認知症保険には、さまざまな付帯サービスがあり、無料で活用できるサービスもあります。
認知機能チェックや認知症予防のための動画プログラム、脳トレアプリ、歩行速度を測定するものなど不担保期間関係なく、契約完了後すぐに利用できるサービスです。
予防や早期治療のためには、認知症・軽度認知障害かもしれないと自身や周囲が早めに気づくことが大切です。
認知症保険におけるデメリット
掛け捨て型保険の仕組みと代替案
認知症保険は、そのほとんどが掛け捨てです。つまり、認知症にならなかった場合保険料は返還されません。
掛け捨てである代わりに、月々の保険料が抑えられています。
若い時に加入すると、月々の保険料は抑えられますが、掛け捨てのリスクが高まります。
認知症の発症原因が、加齢であることを考えると40歳から50歳前半が認知症保険に加入するのに適したタイミングとされています。
高額な保険料への対応策
前述した通り、若い時に加入すると月々の保険料は抑えられますが、支払い期間が長いためリスクもあります。
認知症保険の保険料は60歳以降、保険料が特に増額していきます。
保険加入を検討するかたは、50歳代までにすると保険料を抑えることができます。
認知症保険以外の備えと選択肢
家族信託を活用した認知症リスクへの対応
家族信託とは、財産を所有している人が元気な時に、信頼できる相手に自分の財産の管理や処分をする権限を信じて託すというものです。
例えば、認知症の親の施設入居費用を捻出しようと、不動産売却をしようとしたが、認知症のため売却の意思確認ができず、売却できず困ってしまったというケースがあります。
そのようなケースでは、元気な時に信託契約を結んでおくことで、家族は信託財産の管理や処分をすることができます。
任意後見制度の仕組みと利用方法
任意後見制度とは、ひとりで決められるうちに、認知症や障害の場合に備えてあらかじめ自ら選んだ人に、代わりにしてもらいたいことを契約しておく制度です。
選ばれた人を、任意後見人と言います。利用するためには、手続きが必要です。
まず任意後見人を選び、契約を結びます。
任意後見人選任の申し立て書類を、住所地の家庭裁判所に提出すると、家庭裁判所による調査が行われます。その後、家庭裁判所から、任意後見契約の締結が認められたと通知が届きます。
そうすることで、任意後見契約の効力が発生します。
裁判所への申し立てに必要な費用は、申し立て手数料800円、連絡用の郵便切手代、登記手数料1,400円です。
厚生労働省のホームページに詳しく記載されているので、任意後見制度を利用したい場合は、確認してみてください。
生前贈与や遺言書を活用した財産管理方法
認知症を発症する前の財産の管理方法として、生前贈与や遺言書を活用することも有効です。
自分で意思決定をできるうちに、家族に財産をスムーズに引き継ぎ、相続時のトラブルを未然に防ぐことができます。
- 生前贈与
生前贈与とは、自分が生きている間に財産を特定の人に贈与することです。
相続時の財産総額が減り、課税される遺産額が少なくなります。つまり、相続税の軽減効果があります。
また、贈与する際も、年間110万円までは非課税となっています。毎年110万円ずつ贈与していけば、相続時の財産を大幅に減らすことができるため、長期的な相続税対策となります。 - 遺言書
相続の際に、遺産の分割方法や受取人を明確にするための重要な書類を遺言書と言います。
自筆で書く遺言書もありますが、書き方にミスがあった場合無効になってしまう可能性があるため、公正証書遺言の作成をおすすめします。
公正証書遺言というのは、個人の依頼により、公証人が作成した文書です。法律の専門家である公証人が作成するので、無効になることはまずありません。
作成後、原本は公証役場に保管されるので、紛失や偽造の心配もありません。
自分の死後、配偶者や子どもが相続に関するトラブルに巻き込まれないよう、事前の準備が必要です。
まとめ
認知症保険が必要かどうかは、個人の家族構成、預貯金額や資産によります。
一人で比較検討するのが難しい場合は、ファイナンシャルプランナーなど専門家に相談するのも選択肢の一つです。
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