双極性障害と診断され、将来の治療や費用に不安を抱えていませんか?
自分や家族の生活を守るには、公的支援と生命保険の上手な活用が大切です。
双極性障害でも加入可能な生命保険(保障内容・加入のポイント・注意点)や、公的支援制度(内容・申請方法)について理解し、自分に適した保険を選びましょう。
この記事の内容をまとめると
- 双極性障害の方でも加入できる可能性がある保険には、引受基準緩和型保険、無選択型保険、少額短期保険、がん保険などがあります。
- 双極性障害の治療終了から5年以上経過している場合は、一般の医療保険に入れる可能性があります。
- 双極性障害の方の保険選びのポイントは、加入条件・保障内容・保険料を複数の保険会社で比較し、自分に合ったプランを選ぶことが大切です。
- 双極性障害の方が生命保険に加入する際の注意点は、告知義務を守ることです。
- 双極性障害の方が利用できる公的支援は、自立支援医療制度、障害年金、傷病手当金、生活保護制度があります。
双極性障害の基礎知識
双極性障害とは?診断と症状を解説
双極性障害とは、気分が過剰に高揚する「躁(そう)状態」と気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。
以前は、「躁うつ病」と呼ばれていました。
これらの症状が常に現れるわけではなく、普通の状態もあることが特徴です。
約6~7割のケースでは、うつ状態から発症するため、初めはうつ病と診断されることもあります。
20~30歳代で発症することが多いですが、10代から老年期まで幅広い年齢で発症します。
原因としては、遺伝的要因(ストレスへの感受性など)、生活習慣(睡眠リズムの乱れなど)、環境要因(職場や家庭でのストレスなど)が重なることで発症すると考えられています。
躁状態の程度によって、「双極Ⅰ型障害」と「双極Ⅱ型障害」に分類されます。
- 双極Ⅰ型障害:うつ状態と強い躁状態がみられ、社会的な問題行動を起こしてしまう。
- 双極Ⅱ型障害:うつ状態と軽度な躁状態がみられ、社会的な問題行動に至ることは少ない。
【躁状態の具体的な症状】
- 睡眠をほとんどとらなくても活動し続けられる
- 人の意見を聞かず、話し続ける
- 根拠のない自信に満ちあふれている
- 買い物やギャンブルに莫大な金額をつぎ込んでしまう
- 性的に奔放になる
【うつ状態の具体的な症状】
- 眠れない、あるいは過度に眠ってしまう
- 自分を責める傾向が強い
- 落ち着かなくなる
- 食欲の低下、全身の倦怠感、疲れやすい、頭痛、めまい、動悸、胃の不快感、便秘、下痢などの身体症状がある
※躁状態では気分が高揚し、本人が病気を自覚していないことが多いです。
うつ状態で受診した場合、うつ病と診断され、治療が開始されることがあります。しかし、双極性障害とうつ病は異なる病気で、治療も異なります。
本人だけでなく、周囲の人も躁状態に気づくことが大切です。
双極性障害の治療法|入院・通院の違い
双極性障害は、適切な治療とサポートにより、症状を管理し、社会生活を維持することができる病気です。
治療法は、薬物療法と心理社会的治療の組み合わせで行われます。
薬物療法で効果が得られない場合、電気けいれん療法が検討される場合もあります。
これらの治療法について、詳しく説明します。
薬物療法は、気分安定薬や抗精神病薬が使用され、症状の安定化と再発予防を目指します。
心理社会的治療は、患者や家族が病気の理解を深める心理教育や、家族が協力して病気に対処するための家族療法などがあります。
電気けいれん療法は、脳に電気刺激を与え、症状を改善を促す治療法です。
一定の基準を満たした医療機関で実施した場合などに、健康保険が適用されます。
次に、入院と通院で行う治療の違いについて解説します。
入院治療は、症状が重篤で、日常生活に大きな支障をきたす場合や、自傷・他害のリスクが高い場合に検討されます。
通院治療は、軽度の症状で、安定している場合に適用されます。
精神疾患の影響|仕事や生活への影響
双極性障害では、気分の変動により、日常生活や人間関係、仕事に影響を及ぼします。
躁状態では、過度な自信や活動性から無謀な行動をとることがあり、対人関係のトラブルや経済的な問題を引き起こす可能性があります。
うつ状態では、意欲や集中力の低下により、仕事の能率が下がったり、欠勤が増えたりすることがあります。また、不安障害や摂食障害、依存症などを併発することも多く、これらが社会生活にさらなる影響を及ぼすことがあります。
しかし、適切な治療とサポートを受けることで、これらの影響を最小限に抑え、安定した生活を送ることが可能になる場合が多いです。
双極性障害でも生命保険に加入できる?
生命保険の審査基準|精神疾患は通る?
生命保険に加入する際の審査(引受審査)は、保険会社が契約者の健康状態やリスクを評価し、加入を引き受けるかどうかを判断するために行われます。
審査基準は、主に下記5点が評価されます。
- 健康状態:既往歴(過去の病歴)、現在の健康状態(治療中の病気や服薬状況)、健康診断の結果(提出が必要な場合あり)についてです。
- 職業や仕事内容:危険度の高い職業(建設業、パイロットなど)は保険料が高くなるか、加入できない場合があります。
- 生活習慣:喫煙・飲酒習慣の有無です。どちらもリスクと判断され、保険料が高くなる場合があります。
- 家族の病歴:遺伝的な要因が関係する病気の家族歴(がん・心疾患など)についてです。
- 年齢:高年齢ほど、審査が厳しくなり、保険料も高くなります。
一般的な生命保険では、精神疾患も他の持病と同様に、審査に影響を及ぼす可能性が高いです。
精神疾患を抱えながらでも、加入できる可能性がある生命保険はあります。
詳細については、後述します。
双極性障害の治療が完了し、5年以上経過している場合、通常の生命保険や医療保険に加入できる可能性があります。
ただし、保険会社によって審査基準は異なるため、複数の保険会社を比較しましょう。
双極性障害の保険契約|告知で審査が変わる
告知の内容は、審査結果に大きく影響します。
双極性障害の場合、下記のように判断される場合があります。
治療中の場合は、通常の生命保険の審査が厳しくなる可能性が高いです。
治療完了後に一定期間(一般的に5年以上)が過ぎた場合は、通常の生命保険・医療保険でも加入できる可能性が高まります。
過去に診断を受けた病気がある場合は、現在は症状がない場合でも、保険会社によっては影響を受ける可能性があります。
審査を有利に進めるためのポイントは、主治医の診断書を用意することです。
「症状が安定している」「治療が完了している」などの医師からの客観的な証明があると、審査が通りやすくなります。
症状の安定期間や治療状況を考慮しながら、加入しやすい保険会社を検討しましょう。
双極性障害でも入りやすい保険は?
通常の保険よりも告知項目が少ない引受基準緩和型保険、無告知で加入できる無選択型保険、さらに加入条件が比較的緩い少額短期保険なら、加入できる可能性があります。
ただし、症状が重く、入退院を繰り返している場合などは、これらの保険でも加入が難しくなることがあります。
双極性障害の方が選べる生命保険の種類
引受基準緩和型保険とは?審査の特徴
一般的な生命保険に比べて、健康状態に関する告知項目が少ないのが特徴です。
一般的な告知項目には、下記のようなものがあります。
- 最近3カ月以内に、医師から入院・手術・検査をすすめられたことがありますか?
- 過去2年以内に、入院や手術をしましたか?
- 過去5年以内に、がん・上皮内がん、肝硬変、統合失調症、認知症、アルコール依存症で、医師の診察・検査・治療・投薬のいずれかを受けたことがありますか?
これらの告知項目に1つも該当しない場合に、原則として加入できます。
保険料は、一般的な保険よりも割高です。
保険会社や商品ごとに具体的な告知内容や基準が異なる場合があるので、事前に確認しましょう。
無選択型保険とは?告知不要の生命保険
告知や医師の診査(被保険者の健康状態を把握し、契約の可否を判断)が不要なのが特徴です。
保険料は、引受基準緩和型保険よりもさらに割高です。
保障内容には制限がある場合が多いため、保険料に見合った保障内容か、慎重に検討しましょう。
少額短期保険|契約の流れとポイント
通常の生命保険・医療保険とは異なり、保険金額に上限があり、保険期間が短い特徴があります。
保険会社にもよりますが、引受基準緩和型保険よりも加入条件が緩いのが特徴です。
保険料は掛け捨てで、比較的安い反面、大きな保障は得られにくいです。
また、生命保険料控除の対象外となります。
保険期間は1~2年で(保険会社による)、自動更新が可能な商品も一部ありますが、長期契約はできません。
契約の流れは、「申し込み→審査→契約の成立」です。
簡単な告知で済むことが多く、最短で即日契約が可能な場合もあります。
他の保険との併用も検討しましょう。
がん保険は入れる?精神疾患でも加入可能?
双極性障害などの精神疾患でも、がん保険に加入できる可能性が高いです。
理由は、精神疾患だからといって、がんの発症リスクを高めることはないからです。
ただし、がん保険に加入する時点で、入院中の場合や入院を医師に進められている場合は、がん保険に加入できない可能性が高いため、注意しましょう。
双極性障害の方の保険選びのポイント
保障内容と告知|審査を通すための対策
保障内容は、生命保険・医療保険などの保険の種類や保険会社によっても異なります。
2つの保険について、簡単に解説します。
- 生命保険:万が一の死亡時に、家族の生活を支えるための保険です。精神疾患の既往歴がある場合、加入制限や保険金が削減される場合もあります。
- 医療保険:入院・通院・手術の費用をカバーする保険です。双極性障害があると、精神疾患関連の保障が制限されることもありますので、確認が必要です。
審査を通すための対策2点を解説します。
- 医師の診断書を用意:病状が安定していることを示す診断書があると、審査が通りやすくなります。
- 服薬状況や通院頻度の記録:病状が落ち着いていることを示せると、審査が通りやすくなります。
加入条件と審査基準|契約前に確認すべき点
生命保険に加入する際の審査(引受審査)は、保険会社が契約者の健康状態やリスクを評価し、加入を引き受けるかどうかを判断するものです。
審査基準は下記の要素が評価されます。
- 健康状態:既往歴(過去の病歴)、現在の健康状態(治療中の病気や服薬状況)、健康診断の結果(提出が必要な場合あり)についてです。
- 職業や仕事内容:危険度の高い職業(建設業、パイロットなど)は保険料が高くなるか、加入できない場合もあります。
- 生活習慣:喫煙の有無(喫煙者は保険料が高くなる場合あり)、飲酒習慣(過度の飲酒はリスクと判断される場合あり)などについてです。
- 家族の病歴:遺伝的な要因が関係する病気の家族歴(がん・心疾患など)についてです。
- 年齢:年齢が高いほど、審査が厳しくなり、保険料も高くなります。
これらの審査基準は、保険会社によって異なる場合があるので、複数の会社で比較しましょう。
契約前に確認すべきこととして、下記3点があります。
- 精神疾患に関する免責(保障対象外)事項の有無:双極性障害に関連する入院や治療が保障の対象か確認しましょう。
- 保険料と補償範囲のバランス:無理なく、継続的な支払いが可能か検討しましょう。
- 加入後の告知義務:病状が悪化した場合の対応について確認しましょう。
就業不能保険は必要?双極性障害でも加入できる?
双極性障害の症状が悪化し、仕事が続けられなくなった場合に、収入の補填になります。
ただし、精神疾患による就業不能の場合は免責(保障対象外)になる場合が多く、一般の就業不能保険への加入も困難なことが多いです。
しかし、一部の保険会社では、精神疾患でも一定の要件を満たした場合に対象となる商品があります。
保障期間と保険料|コストを抑えて備える
保障期間の選び方
- 定期型(10・20年など):保険料が安いですが、更新時に再審査があります。
- 終身型:保険料が高いですが、加入後の変更リスクが少なく済みます。
保険料を抑えて備える方法
- 最低限の保障に絞る:入院給付金のみのプランなどを検討しましょう。
- 精神疾患の保障が可能な共済を探す:一部の地域共済や職域共済では加入しやすい場合があります。一般的に加入は厳しいものの、可能性はゼロではありません。
- 傷病手当金や障害年金などの公的保障を活用しましょう。
生命保険に加入する際の注意点
告知義務違反のリスクと契約解除の可能性
告知書の内容に事実と異なる内容があった場合、告知義務違反となり、保険金や給付金が支払われない場合や契約解除となる可能性もあります。
それまでに支払った保険料が返金されることもありません。
告知書は、加入の是非や保険料を保険会社側が判断するもとになります。
不明な点は保険会社の担当者に確認し、十分に注意して記載しましょう。
生命保険の見直し|更新時の注意点
生命保険の見直し時には、現在の保障内容(死亡保障、医療保障、特約の有無など)を再確認しましょう。
特に重要な点は、ライフイベント(結婚、子供の誕生・独立、住宅購入、定年退職など)に応じた必要保障額か、不要な保障が含まれていないかです。
更新時の注意点は、保険料の上昇(年齢が上がるほど、更新後に高くなる)、健康状態の影響(新たな病気が見つかると、難しくなる可能性)、保障内容の変更の有無を確認することが大切です。
また、別の保険に乗り換える場合は、保障の空白期間ができないように、必ず新しい保険の加入が完了してから既存の保険を解約しましょう。
精神疾患で給付金が出ないケースとは?
精神疾患を抱えている方が、生命保険・医療保険に加入した場合、すべてのケースで給付金が支払われるとは限りません。
下記に、給付金が支払われない具体例を解説します。
- 精神疾患が免責対象になっている契約の場合
- 免責期間内に自殺した場合
- 告知義務違反が確認された場合(契約を解除され、保険金も一切支払われません)
- 精神疾患による原因の死亡(事故・自殺)が免責事項になっていて、精神疾患による原因で死亡した場合。
- 加入後の待機期間中に、入院・治療した場合(一部の保険では、一定期間は支払われないことがあります)
給付金が出るかを確認したい方は、契約書・約款をチェックしましょう。
それでもわからない場合は、保険会社に直接問い合わせましょう。
生命保険以外の公的保障制度を活用しよう
自立支援医療制度|通院・治療費の負担軽減
年齢に関係なく、双極性障害と診断された方が対象となり、医療費の自己負担額を軽減する制度です。
通院・治療費や薬代の自己負担額が、原則1割になります。
障害年金の申請方法|受給条件と手続き
障害年金制度とは、ケガや病気によって日常生活が制限される場合に、年金が受け取れる制度です。
双極性障害の方も対象ですが、下記の3点が受給条件です。
- 初診日要件:病気の初診日には、国民年金または厚生年金に加入していること。
- 保険料納付要件:年金に加入してからの期間のうち、保険料納付済み期間と免除・猶予期間を合算した期間が3分の2以上あり、直近1年で滞納がないこと。
- 障害状態要件:双極性障害における障害等級は、1~3級まであります。国民年金の場合は、障害等級1・2級が対象です。一方、厚生年金の場合は、障害等級1~3級が対象です。
障害年金の申請手続きの流れは、「必要書類の準備→提出→審査→結果の通知」です。
下記に詳しく解説します。
- 必要書類の準備:年金請求書、精神の障害用の診断書(主治医に作成を依頼)、病歴・就労状況等申立書(発病からの経過や生活状況を記載)、初診日を証明する書類(受診状況等証明書など)、本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)などです。
- 提出先:お住まいの地域の年金事務所または市区町村役場の窓口です。
- 審査と結果の通知:提出後に審査が行われ、通常3~6ヵ月程度で審査の結果が通知されます。
傷病手当・生活保護|精神疾患の支援策
傷病手当金制度とは、雇用保険に加入している人がケガや病気で働けない間、一定期間の収入が保障される制度です。
連続3日以上休んだ後、4日目以降から休んだ日に対して支給されます。
最長で、1年6ヵ月までです。
有給休暇などで給与が支払われる日は対象外で、個人事業主や自営業の方も対象外です。
生活保護制度とは、生活に困窮する方に対し、最低限度の生活を保障し、自立を支援するための公的制度です。
精神疾患を抱える方も対象で、収入や資産が一定基準以下の場合に支給されます。
双極性障害の方に関連する内容として、以下のものがあります。
- 生活扶助:日常生活に必要な費用(食費や衣類費など)に対する支給
- 住宅扶助:家賃や住宅の維持費に対する支給
- 医療扶助:通院や治療に掛かる費用の支給(自己負担額の全額)
ただし、地域によって、支給金額は異なります。
生活費に充てることができる貯金や売却が可能な資産などがある場合、生活保護の対象にはなりません。
まとめ|双極性障害でも生命保険は加入できる!
自分に合う生命保険を見つける方法
自分や家族が将来的に、どのようなリスクに備えたいのか、加入目的を明確にしましょう。
必要な保障内容を確認し、適切な商品を選択します。
病気の状態や年齢などにより、加入できない場合もあるので、各保険会社の加入条件を比較しましょう。
双極性障害の方でも入れる可能性がある保険には、引受基準緩和型保険、無選択型保険、少額短期保険、がん保険などがあります。
保険会社によって保障範囲や加入条件が異なる場合があるので、複数の保険会社で比較しましょう。
家族に負担をかけないための備え
双極性障害の治療は、入院や通院が長期的に必要になる場合があります。
家族の経済的な負担を減らすには、備えが必要です。
まずは、公的保障制度を十分に活用しましょう。
その上で、家族構成やライフイベントを考慮し、足りない部分の保障を生命保険で補うなど、トータル的に検討しましょう。
保障内容と保険料のバランスが大切で、長期的に無理なく継続できるプランを設定しましょう。
<参考>
- 知ることからはじめよう こころの情報サイト「こころの病気を知る-双極性障害(躁うつ病)」
- 知ることからはじめよう こころの情報サイト「こころの病気を知る-うつ病」
- American Psychiatric Association. Diagnostic and statistical manual of mental disorders, fifth edition (DSM-5). Arlington VA: American psychiatric publishing; 2013.
- 生命保険文化センター「生命保険の基礎知識」
- 公益財団法人 生命保険文化センター「生命保険を知る・学ぶ」
- 公益財団法人 生命保険文化センター「ひと目でわかる生活設計情報」
- 厚生労働省「自立支援医療制度の概要」
- 知ることからはじめよう こころの情報サイト「治療や生活へのサポート 障害者手帳・障害年金」
- 日本年金機構「障害年金」
- 全国健康保険協会「傷病手当金」
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